2022/10/02
元首相銃撃で“宗教”の二文字に触れることが多くなったこの頃ですが、事件とは直接関連ない話題です。よく、日本人は“宗教心がない”とか言われますが、私はとても宗教心に篤い国民だと思っています。宗教が何か、定義はよく知りませんが、勝手に“人智を越えた”存在を畏怖し、救いや安心を求める概念とでも思っています。初日の出に歳神様を重ねて幸せを祈り、初詣で金運、健康運、恋愛運、受験合格、世界平和など現世の利益を願い、お盆には故人に思いを馳せるついでに助力を願い、七五三で子や孫の健全な成長を祈ります。神さまが見ているので悪いことはできません。“○○教”という特定宗教の信者ではないかもしれませんが、折に触れて神仏を感じて生活しているのが一般的日本人と思います。
宗教と言うと、イスラエルはテルアビブ大学の世界的パーキンソン病研究者、メラメド先生を思い出します。ポーランド系ユダヤ人、ナチスの迫害で多くの家族を失った経歴の持ち主です。国籍、年齢を問わず、パーキンソン病研究者に気さくに声をかけ、豊富な知識を基に議論し、教えてくれました。日本には毎年のように講演に来られ、国際学会でも会うので、年に何度も挨拶の機会がありました。この先生、村上春樹の愛読者で、高松で国際シンポジウムに参加時、“海辺のカフカ”の舞台に来られたことを大いに喜んでおいででした。“カフカ”はギリシャ神話のモチーフが個性的登場人物により演じられます。ストーリー展開の背景に、善悪を越えた日本的畏れの世界感、ないし宗教観を勝手に感じておりましたので、ある時一神教のユダヤ人でも受け入れられる世界かと問うと、宇宙や自然への畏怖は人間皆が感じることだと指摘されました。一言一言が重く、深い、哲人。しかし、いつも笑顔で励ましてくれる優しい先生でした。細胞移植療法など、新しい分野を手掛けていた途中、病を得て冥界の人となりました。合掌。