2023/11/01
(写真)上段左よりヤマブドウ、野菊、
琉球朝顔
中段左よりイヌタデ、ハギ
下段は日没時のビーナスライン
以前、晩秋のイメージカラーにオレンジを挙げました。秋前半のイメージは紫。ひっそりと、しかし爽やかに存在感を示します。食卓の代表は秋ナス、サツマイモ、ブドウ。「秋ナスは嫁に食わすな」とか言いますが、おいしい秋ナスを嫁にあげない意地悪でなく、身体を冷やすと信じられていた時代の親切心から出た言葉のようです。良かった。岡山で紫ブドウの代表はピオーネ。手軽に食べられるシャインマスカットに人気を奪われましたが、甘さ、気品では負けません。アケビの実も紫。昔は山際の其処此処に実り、山野探索疲れ時の貴重な甘みでした。山ぶどうもあったナ。今は整地されていずれも消滅です。
街中では通勤途中に見かけるアメジストセージひと群れ。青空に伸びる紫の花穂が揺れて爽やかです。秋日に燃えるケイトウ、半日陰にはホトトギス、シュウメイギク。数が増えた琉球朝顔の花は青とばかり思っていたのですが、このところ赤紫が目立ちます。時間帯で色が変わる不思議。気温が低いと紫のようなーーー。
野に出ると、野菊(ノコンギク)。可憐な美しさながら、なぜか目立たない。紫色の属性らしい。フジバカマ、クズ、ハギは秋の七草。リンドウ、キキョウも七草ですが、今は生花コーナーでしか見かけません。同じ紫でもピンクに近いものから青系まで、色合い様々。イヌタデは赤に近い紫。迷惑系くっつき虫No.1のアレチヌスビトハギも花は淡い紅紫です。藪の青草に埋もれて小さく咲き、人目に触れません。掻き分け通った際に実がくっ付いて初めて存在を知り、大いに弱るわけです。取り方教えて、ミタゾノさん。同じ藪にはクズが生い茂り、家屋に浸入し。駆除が大変です。数あるなかの代表はハギ(萩)かな。何と言っても、文字がそのまま秋の植物なのです。文字と言えば、名前がまんまのムラサキシキブ。小さな紅紫の実が集簇しています。官舎の庭に植えたのが遠い昔となりました。ヨウシュヤマゴボウは北米原産の帰化植物。その実は毒々しいつやつやの濃紫。山ぶどう様ですが有毒サポニン入り。茎も紅紫で毒々しい。秋の紫、たくさんありますが、ここ1,2週で遭遇したものを中心に選びました。悪しからず。
(写真)上段左から千日紅、
シュウメイギク、フジバカマ。
花壇左から秋スミレ、ヤマブドウ、ニシキギ
さて、秋は夕暮れ。清少納言は枕草子に秋の移り行く夕景色を描写して見事です。言葉は古語ですが、感性は古びることがありません。カラスや雁が絶滅しない限り普遍的に共感できる日本的風情。人間絶滅が先かな?。夕暮れ、日の入り後薄明の時間帯に、残照の端が鮮やかなピンクや紫に変わる。そんな景色に遭遇することがあります。たなびく薄雲の中で光が散乱し、太陽の赤と空の青とが混ざってピンクや紫を描出するようです。日の入り反対側の低い空にも紫の帯が出現します。空気が乾燥する季節の好天日に現れるビーナスラインです。清少納言の推す夕暮の紫雲はなんと春でした。ところで、ハロウィンのテーマカラーはオレンジ、黒、紫です。生と死。紫は夜空のイメージだそう。夕暮の紫は時代、地域を問いません。